普通科に通うほとんどの高校生は、高1〜高2で文系・理系にクラス分けを行います。
高校生の保護者としては、お子さんの文理選択が気になって仕方がないのではないでしょうか。
- 理系は就職が良いと聞いたので、理系に行ってほしい
- 自分が文系で就職が大変だったので、理系に行ってほしい
- 医学部・教育学部・心理学部など資格系の学部へ進学して、食いっぱぐれない道を歩んでほしい
そんな思いをお持ちの方も多いでしょう。
しかし、口出しをしすぎて保護者主導で文理選択をすると、お子さんが進学後にモチベーションを失い、大学生活がうまくいかなくなるケースも少なくありません。

21年間で600名以上の生徒を担任し、大学卒業後の進路を聞いてきました。
私の経験をもとに、保護者ができる高校生の「文理選択のサポート方法」をお伝えします。
この記事を読めば、お子さんは進路に希望を抱き、前向きに大学進学できるでしょう。
結論、高校生本人が「楽しそう!」と思える進路に進むことが、充実した大学生活や就職につながります。
そのために必要なのは、大学生の先輩との交流やオープンキャンパスでの体験など、お子さん自身が「肌で感じる」リサーチです。
この記事では、そうしたリサーチをお子さんが積極的に行えるよう、保護者としてどうサポートすべきかをお伝えします。
著者プロフィール



中高一貫校の教員として21年間勤務してきたK先生です!
皆さんの大学進学のサポートをさせていただきます!
詳細はこちら
愛知県出身/国公立大学農学部卒
中高一貫校の教員として21年間勤務。
学年主任を務めながら、東大・京大・医学部を含む難関大受験の指導に携わる。
2025年4月より教育ブログ「EduWave 学びの探究」を運営。
教員歴21年の私がブログを始めた理由と使命
教員として多くの生徒と向き合ってきましたが、どれだけ頑張っても伝えられる相手は限られていました。クラスの生徒・保護者・せいぜい学年内まで…。
もっと多くの人に、
- 大学受験に関する有益な情報
- 日本の教育の良さや課題
- これからの時代に必要な力
を届けたい。
このブログは、教員という枠を超えて、大切なことを伝えるための新しい挑戦です。
良い文理選択をするためのサポート方法


文理選択は大学だけでなく、就職や人生を左右する大きな決断です。お子さんにとっては、生まれて初めて「自分の将来」を真剣に考えるタイミングかもしれません。
保護者ができるのは、お子さんが納得のいく決断ができるよう、様々な情報や体験の機会を提供することです。
ここでは、お子さんが自分に合った良い文理選択を決断するための具体的なサポート方法を紹介します。
オープンキャンパス・大学見学へ行く
お子さんにオープンキャンパスに参加するよう促してください。オープンキャンパスでは実際に大学のキャンパスに足を踏み入れ、教授や大学生と交流できます。
- 実際の授業の雰囲気を体験できる模擬講義
- 研究室見学で最先端の研究に触れられる
- 在学生との質疑応答で大学生活のリアルを知れる
- キャンパスの設備(図書館、実験室、学食など)を実際に見られる
- 同じ大学を目指す高校生の顔が見られる
オープンキャンパスに参加すると「なんとなく」から「行きたい!」へ変化します。



オープンキャンパスに参加して第一志望が決まった生徒を何人も見てきました。保護者や友達と一緒に、旅行気分で行ってくると良いでしょう。
オープンキャンパス参加のタイミング
高校1年生の夏から参加を始めると良いでしょう。早めに様々な大学を見ることで、文理選択の判断材料が豊富になります。
「まだ早い」と思われるかもしれませんが、大学に出向くことで学習へのモチベーションが大きく向上します。百聞は一見に如かずです。ぜひお子さんと一緒に、実際の大学の雰囲気を体感してみてください。



もし定員いっぱいだったらら大学見学だけでもOK。学食や生協は開放されているので、何食わぬ顔でご飯を食べてくると良いでしょう。
大学生に会う、大学生の家庭教師をつける
オープンキャンパスでは大学教授や学生と交流できるとはいえ、自分から積極的に質問するのは勇気がいります。そんなときは、身近にいる大学生に話を聞くのが効果的です。
親戚や知人に大学生がいれば、一度会わせてみてください。学校の雰囲気や授業、サークル、バイト、就活のことなど、リアルな大学生活の話をざっくばらんに聞ける貴重な機会になります。
大学生の家庭教師をつけるのは一石二鳥です。
- 勉強を見てもらいながら、大学のことを気軽に質問できる
- 受験のリアルな体験談を聞けるのでモチベーションアップにつながる
- 勉強だけでなく進路の悩み相談にも乗ってもらえる
おすすめは東大生のオンライン個別指導『トウコベ』です。
東大生がどんな高校生活を送っていたか興味がありませんか?
「東大生がどうやって勉強していたのか?」「モチベーションをどう保っていたのか?」聞くことができます。
そして、あなたの学習状況に沿って、あなたに合った勉強方法を一緒に考えてくれます。



成功している人の話を聞いて実践するのが一番早いよね!
東大に行った卒業生の話は説得力が段違いです。
身近な大学生の存在は、親や先生とは違った視点で進路選択を考える大きなヒントになります。気軽に相談できる存在を身近に持つことは、思春期の子どもにとって大きな支えになります。トウコベの個別勉強相談
夢ナビライブやオンラインイベントに参加
夢ナビライブは株式会社フロムページ主催で文部科学省が後援している合同進学オンラインイベントです。
2025年度は10月4日(土)、5日(日)に開催されます。
昨年度は約8万人が参加しています。さまざまな専門分野の大学教授による研究紹介や、大学の特徴に触れられるプログラムがすべて無料で視聴できます。オンラインなので、全国どこからでも参加できます。
昨年の夢ナビライブ参加者の感想はこちら!



夢ナビは高校生向けに開催しているイベントだから凄くいいです!
ぜひ参加してみてください。
オンラインイベントはウェビナーと言われることもあります。
ウェビナーとは「Web(ウェブ)」と「Seminar(セミナー)」を組み合わせた造語で、インターネット上で開催されるセミナーや講演会、イベントのことを指します。
「ウェブセミナー」「オンラインセミナー」とも呼ばれます。
東京大学では、毎週金曜日の夕方に東大金曜特別講座を実施しています。


京都大学では様々なオンラインイベントが開催されています。
名古屋大学では名大カフェという名でオンライン・オフラインのイベントが開催されています。


他の大学でも様々なセミナーが開催されています。ぜひ、検索して参加してみてください。
理系・文系どっちに転んでもシメタ!


結論から言うと、理系・文系どちらに進んでも、本人が納得して選んだ道であれば十分に充実した大学生活や就職が実現できます。
「理系は就職に有利」とよく言われますが、実際の就職率を見ると、文系の就職内定率が約97.9%、理系が98.8%とその差はごくわずかです。
理系は専門性が高いため、専門知識を活かした職種への就職がしやすく、内定獲得の時期も早い傾向があります。一方で、文系は幅広い業界・職種にチャレンジできる柔軟さがあり、学生時代の経験やコミュニケーション力が評価される場面も多くあります。



大切なのは、本人が「この学問を学びたい」「この大学に行きたい」と心から思えるかどうかです。
保護者の期待や世間のイメージだけで進路を決めてしまうと、大学生活やその後のキャリアでモチベーションを失ってしまう可能性があります。
理系・文系どちらを選んでも、本人が興味を持って前向きに取り組めれば、社会に出てからも自分らしく活躍できるケースがほとんどです。
子ども自身が「楽しそう!」と感じる学問や大学を見つけられるよう、保護者としてサポートしましょう。
理系は就職に有利だが適性が必要
理系は就職のときに専門性を生かせるため採用率が高く、早く就職活動を終えることができます。
とはいっても、専門性の高い研究をやり切る能力や意欲が必要です。
- 毎週、午後の実験実習とそのレポート課題提出
- 論文(英語)の検索と熟読、要約してゼミで発表
- 時間や労力のかかる実験と実験データの整理
- 研究論文の作成と学会発表(海外もあり)
数学や理科が得意だから理系に行くという安易な考えだと、専門性の高い学問に触れたとたんに興味を失ってしまったり、研究生活に耐えられず中退を選ぶケースも実際に存在します。



いくら理系科目が得意でも興味がなかったらやる気はでません。
工学部に進学してもフリーターに
以前、上位の国立大学工学部に進学した生徒(Aさん)がいました。Aさんは1年浪人し、苦労して第一志望に合格しました。
- 高校時代は理科が得意だった
- 真面目でコツコツ取り組める性格だった
- コミュニケーションは苦手だった
- 大学の見学や実際の研究内容のリサーチはしていなかった
大学入学後、しばらく音沙汰がありませんでしたが、大学4年生の夏に私のところを訪ねてきました。話を聞くと、大学院に行くのを辞めたとのこと。就職は大手企業を複数社受けてもすべて不採用で、行き先がなく悩んでいるという話でした。



中小企業であってもとにかく就職活動をするよう勧めました。
幸い地元の中小企業に内定が決まり、一件落着と思いましたが⋯。
なんと、1年も立たずに会社を辞めてしまいました。その後はアルバイトで食いつないで生活しています。
Aさんは何が悪かったのでしょうか?私の見立てを以下に示します。
- 研究ではコミュニケーション能力が必要だったが、不十分だった
- プレゼンテーション能力や議論する力が不足していた
- 自分の適性と理系研究の現実にギャップがあった
- 大学のネームバリューで就職できると安易に考えていた
- 理系の専門を生かした仕事が全くできなかった



理系で大切なのは、研究のリアルな現場を事前に見ておくこと。
高校生のうちにオープンキャンパスや大学見学、大学生の先輩の話を聞いておくと良いですね!
化学が得意で薬学部に進学するも退学
高校では化学の成績がトップクラスで、私立の薬学部に合格したBさんです。
- 数学や理科などの理系教科が得意だった
- ガリガリ勉強するタイプではなく、授業を受けているだけで点数が取れてしまう天才肌だった
- 運動部に所属していたが「楽しくできればいい」スタンスで、のらりくらり過ごすタイプだった
- 大学の見学や実際の研究内容のリサーチはしていなかった
入学後、薬学部の現実に直面しました。高校化学とは比べ物にならない膨大な暗記量、複雑な有機化学反応、厳しい実習レポート…。
これまで「なんとなく」で乗り切ってきたBさんには、本格的な勉強が必要な環境は苦痛でしかありませんでした。
結果、4年ほど在籍しましたが、2年生から3年生へ進級ができず大学中退となりました。



Bさんの場合は、高校時代本気で勉強や部活に取り組んだことがなかったんだよね。
薬学部の化学の勉強は高校の化学とは質も量も違っていて、本気で勉強しないとついていけません。これが理系学部の現実だよ。
Bさんは自分のことに本気になれないタイプでした。行き当たりばったりで「のんびり楽しく過ごせればいい」という緩いイメージです。
「何が自分にとって正解か?」
高校生のときにはわからないものですが、できる限り自分が進む先をリサーチしておいて損することはありません。



思っていた大学生活と全然違った。
こんなはずではなかった⋯。
Bさんのケースから学べるのは、「得意科目=適性」ではないということです。
高校で化学ができても、薬学部で求められる継続的な努力や膨大な暗記に対する適性は別物です。
お子さんには、得意科目だけでなく「本気で取り組めるか」「継続して努力できるか」という視点からも進路を考えてもらいましょう。そのためには、実際の大学生活や職業の現実を事前に知ることが不可欠です。
文系は学生時代に何をやるかが重要
文系学生にとって就職活動は、理系学生よりも厳しい戦いとなります。理系の学生が研究室推薦や教授の紹介で比較的スムーズに内定を獲得できるのに対し、文系学生は一から自分で企業を探し、エントリーシートを書き、面接を受けなければなりません。
理系学生が平均10〜20社程度にエントリーするのに対し、文系学生は20〜30社、多い学生では100社以上にエントリーするのが現実です。これは文系学生にとって就職活動がいかに時間と労力を要する作業かを物語っています。
理系学生が大学4年生の夏頃には内定が決まることが多いのに比べ、文系学生は大学3年生の春から本格的に就職活動を開始し、4年生の秋まで続くケースも珍しくありません。約1年半という長期間にわたって就職活動に時間を割かなければならないです。



私は農学部出身なんだけど、研究室とやり取りのある企業だったら顔パスで内定取れたと思うよ。それくらい研究室の力は偉大!
研究室の仲間や先輩の多くは専門を生かした就職をしていたよ。
学生時代の経験が採用の決め手
文系学生の就職活動で最も重要なのは、大学生活でどのような経験を積んだかです。企業の人事担当者は学業成績だけでなく、以下のような点を重視して評価します。
- 課外活動での実績:体育会での活動、学生団体での役職経験、ボランティア活動など
- アルバイト経験:責任のある立場での経験、チームワークを発揮した事例
- インターンシップ参加:企業での実務経験、業界理解の深さ
- 留学・資格取得:語学力、専門知識、向上心の証明
特に体育会系の部活動経験者は、企業から高く評価される傾向があります。実際に多くの企業で、体育会出身者の採用枠が設けられているほどです。
一方で、大学生活を何となく過ごしてしまった学生は、就職活動で苦戦する傾向があります。「学生時代に力を入れたことは何ですか?」という定番の質問に対して、印象的なエピソードを語れない学生は、早い段階で落とされてしまうことも少なくありません。
文系を選択する場合は、就職活動で勝負できる「何か」を大学生活で身につけることが不可欠です。保護者としては、お子さんが大学入学後に積極的に様々な活動に参加するよう、早めからアドバイスしておくことが重要でしょう。
体育会系は企業からは重宝される
体育会の部活動に所属している学生は、就職活動において企業から高く評価される傾向があります。その理由は、単に体力があるだけでなく、社会で求められるさまざまな資質を身につけているからです。
- 体力がある・ストレス耐性が高い
厳しい練習や試合を乗り越えてきた経験から、体力や精神的なタフさが身についています。企業は、社会人としての長時間労働やストレスの多い環境にも耐えられる人材として期待しています。 - 理不尽もある程度は許容できる
部活動では理不尽な場面や厳しい上下関係も経験します。そのため、社会に出てからも困難や理不尽を乗り越える力が備わっていると評価されます。 - 上下関係を理解している・礼儀正しい
体育会系の部活では、先輩・後輩の関係や礼儀作法が徹底されます。こうした規律意識や礼儀正しさは、職場での人間関係やビジネスマナーに直結します。 - チームワークがある
チームで成果を出すために協力し合う経験を積んでいるため、協調性やリーダーシップ、コミュニケーション力が自然と身についています。
部活動を通じて築いたOB・OGや先輩とのネットワークも、就職活動の情報収集や相談の場面で大きな強みとなります。
実際の調査でも、運動部学生の約8割が「就職活動に有利だと感じている」と回答しており、誇れる経験や自信につながっているという声が多数上がっています。
体育会で得た経験や人間力は、社会に出てからも大きな武器となるでしょう。
参考文献:マイナビ 多忙な運動部学生の就活に対する複雑な心境 ~運動部学生の就職に関する意識調査より~
勢いとノリでメガバンクへ就職
Cさんは高校時代、ある競技でインターハイに出場しました。レギュラーで大活躍というわけではなく、リードしている試合の後半にちょっと出るくらいの控え選手でした。
- 文系クラスに所属していて成績は底辺⋯
- 勉強は苦手で努力して机に向かうのが苦手なタイプ
- 愛嬌があってノリが良く、クラスを盛り上げる人気者
- 学力では大学入試を乗り切れないと考え、競技成績を活かせる入試方法を徹底的にリサーチしていた
Cさんは競技成績をうまく活用し、関西の難関私立大学に現役合格。大学でも体育会で競技を続けました。
そんなCさんですが、就職も要領よく進めます。
体育会で培った場を盛り上げるトークや愛嬌を振る舞い、見事メガバンクへの就職をあっさり決めてしまいました。



Cさんは本当に勉強できなかったよ(笑)
でも、難関大学への合格もできたし、就職も余裕。
人間力と戦略の勝利だね!
現在もメガバンクに所属し、近い将来ステップアップを目論んで転職も考えているそうです。
高偏差値大で大手に就職できない?
高校でトップクラスの成績を誇り、旧帝大の法学部に現役合格したDさん。大学でも体育会の運動部に所属し、まさに文武両道の優等生でした。
- 文系クラスに所属していた
- 能力が高く、努力もできるタイプで成績はトップ
- 部活動を3年間継続し、レギュラーとして活躍した
- マニアックな気質で、完璧主義者
- 細かいことに対して気を取られる性格だった
- 初対面ではコミュニケーションを取りづらい雰囲気があった
順風満帆に見えるDさんの経歴ですが、大学4年生の春、就職活動の現実を目の当たりにしました。
なんと50社受けてすべて一次面接で落とされたとのことでした。
最終的には大手企業の1社がDさんの内面を見抜いてくれて、無事に内定ゲットしました。



Dさんは誰もが納得する実績をもった素晴らしい生徒だったよ。
でも、自分の良さを短い時間でアピールする面接は苦手だったようだね。
就職が決まった後「学力よりもコミュニケーション能力が大切だと嫌ほど思い知らされた」と語っていたよ。
Dさんの事例は、高偏差値の大学、体育会部活動所属という高スペックであっても、就職が確約されないことを証明しています。



私は就職活動していないので偉そうなことを言えませんが、最後は人を見ているんだと思います。
Dさんは連続不採用の現実を受け入れ、大学のキャリア担当者に相談して面接対策を徹底してやったみたい。諦めずに工夫して大手企業の内定を取ったのは素晴らしいことだよね!
得意科目で文理選択するのはあり?
結論、得意科目だけで文理選択をするのは多くのリスクがあります。なぜなら、得意と好きは必ずしも一致しないからです。
- 国語が得意でも古文や漢文には全く興味が持てない
- 数学が得意でも、普段の生活で使えない数学に全く興味がわかない
など、得意=好き ではないのです。
また、得意と思っていた科目が本当は得意ではなかったケースもあります。
- 物理が得意だと思ったが、物理基礎から物理に入って難しい分野に刃が立たなかった。
- 英語が得意だと思ったが、難関大学の長文読解や自由英作文対策についていけなかった。
しかし、得意科目での選択が完全に間違いというわけでもありません。



21年間の指導経験から見た、得意科目で文理選択をした生徒の成功と失敗のパターンを具体的に解説するよ〜
数学が得意だから理系を選ぶ その結果は?
高1で習う数学ⅠAのレベルと理系が履修する数学Ⅲのレベルは天と地ほどの差です。数学が他の教科よりも少し点数がいいから、模試の偏差値が良いからといって安易に選ぶと失敗します。
単に計算ができるだけでなく「なぜこの公式が成り立つのか」「この解法の背景にある考え方は何か」といった数学の本質的な部分に興味を持てる生徒は、理系でも成功しやすい傾向があります。
数学得意 → 理系選択で失敗するパターン
高校の定期テストや高1・高2の模試は、パターンを演習することで取れてしまいます。理系の大学入試の数学は非常に難解で、問題の冒頭でつまづくと0点になってしまいます。



すべての教科で成績がトップクラスだったEさんは、理系を選択したけど数Ⅲの微積で挫折して数学の成績は下降。理系難関大の数学には太刀打ちできないレベルだった。
不安な場合は数学Ⅲの教科書や参考書を見てみると良いでしょう。
「文系科目が苦手だから」という消極的理由で理系選択のパターン
国語や社会が苦手で、相対的に数学の成績が良いという理由だけで理系を選ぶと、本格的な理系科目の学習で挫折するケースが多く見られます。
文転して難関大学に合格した生徒も多い
理系では、数学Ⅲ・物理・化学といった難易度の高い科目を複数抱える必要があります。一方、理系から文転した場合は、国語・英語・社会が中心になりますが、理系数学の経験を生かして社会の代わりに数学を武器にすることができます。



文転の最大のメリットは、理系数学を経験した上で文系数学を解くことにあるんだ。文系の数学は一部の難関大を除けば理系よりも明らかに解きやすいからね。
数Ⅲの微積と数Ⅱの微積では雲泥の差だよ。楽に感じると思うよ!
数学が苦手だから文系を選ぶ その結果は?
数学が苦手な場合、文系を選ぶのは決して逃げではなく、現実的で良い判断になる場合があります。
2013年度からの新学習指導要領に移行してから、理系に進んだ場合に課される数学・理科の難易度と学習負担は非常に重く、数学への苦手意識が強いまま理系に進むと、受験勉強も大学の学びも苦痛になってしまうことが少なくありません。



近年の理系の負担は相当大きい。厳しいけど、数学が苦手なら必死で努力して点数で証明するしかない。
高1の段階でそれができないなら文系に行った方がよりレベルの高い大学に行ける可能性が高くなるよ。
「理系の専門的な学問を学びたい」「将来は研究開発の職につきたい」などの強い願望がなければ、文系の難関大学はおすすめです。
- 専門を生かした就職は少ないが、幅広く職種を選べる
- 優良企業への就職率が高い
- OBの力が強く、社会に出てからの支えになる
- 時間的に理系よりも余裕があり、バイトやサークル活動に割ける時間が多い



正直、理系科目の労力に比べると文系科目のほうが攻略しやすく難関大への合格可能性も高くなるよ。
理科が得意だから理系を選ぶ その結果は?
結論、理科が得意だから理系を選ぶのは良い結果になることが多い印象です。



私は理科の教師ですが、
「理科が得意な人」=「理科が好きな人」のイメージが強いです。
理科が得意かつ好きなら理系を選ばない手はないでしょう!
理科が得意ならぜひ積極的に理系を選びましょう。良い選択になると思います!
物理・化学・生物・地学のどの分野に興味があるかを考えておくと、より自分に合った進路選択ができるでしょう。
物理が得意 → 工学部で活躍しやすい
化学が得意 → 薬学部、工学部(応用化学系・材料系)で力を発揮
生物が得意 → 医学部、農学部などが適している
※理学部は物理・化学・生物・地学・数学を極める学部です。



理系は、理科だけでなく数学も必要になることを忘れずに。物理選択なら特に数学の力が重要だよ!
社会が得意だから文系を選ぶ その結果は?
結論、社会が得意だから文系を選ぶのは、良い結果につながることが多いです。



私は中高生のとき、歴史が大の苦手でした。ぜんぜん興味が湧かずに頭に入ってきません。
でも、地理が大好きで地図帳を開くのが大好きでした。もちろん得意だったのは地理です。
社会も理科と同様に 「得意」=「好き」になりやすい教科です。
世の文系学部の多くは社会に関する課題を解決するための学部です。社会のある特定の分野が好きなのであれば、その研究ができる大学を探すのは容易です。
日本史・世界史が得意 → 史学科、文学部史学専攻、教育学部社会科
地理が得意 → 地理学科、環境学部、都市工学、観光学部
政治経済が得意 → 法学部、政治学部、経済学部、経営学部
倫理が得意 → 哲学科、倫理学科、宗教学部
社会が得意でも注意すべきパターン
暗記だけで乗り切ってきた場合は要注意です。大学の社会系学部では、暗記した知識をもとに「なぜそうなったのか」「どう解決すべきか」を考える力が求められます。



日本史が得意だったFさんは、大学の史学科で史料を読み解き、自分なりの解釈を論文にまとめる作業に苦戦。
高校までの暗記中心の学習と大学での研究は全く別物だったと語っています。
社会が得意な生徒は文系で力を発揮しやすいですが、大学では「覚える」から「考える」へのシフトが必要です。
迷ったら文理融合の学部を目指すのもあり
文系理系に迷ったら文理融合の学部を目指すのもありです。文理融合の学部は、文系でも理系でも受験できるよう科目が設定されています。
ただし、文理融合の学部のある大学は旧帝大や早慶などハイレベルな大学が多く、入試難易度が非常に高いです。
「迷ったから」という理由だけでは合格は困難で、相当な学力が必要になります。
大学名 | 学部名 | 特徴・学びのポイント |
---|---|---|
東京大学 | 教養学部 | 前期課程で幅広いリベラルアーツ教育を受け、後期課程の「教養学科」では人文・社会・自然科学を横断的に学ぶ。超域文化科学・地域文化研究・総合社会科学の3分科で、学際的・国際的な視点と高度な教養を養成。複数分野を関連づけて履修できる柔軟なカリキュラムと、外国語教育の重視が特徴。 |
京都大学 | 総合人間学部 | 人文・社会・自然科学を横断し「人間とは何か」を多角的に探究。主専攻・副専攻を選択し、文理を超えて自由に学べる。幅広い教養と専門性を両立し、現代社会の複雑な課題に柔軟に対応できる人材を育成。 |
大阪大学 | 人間科学部 | 心理学・社会学・教育学・行動科学・生物学など、人間に関する多様な分野を融合的に学ぶ。人間の心・社会・身体・環境を総合的に理解し、実証的な研究やフィールドワークも重視。文理の枠を超えたアプローチが特徴。 |
慶應義塾大学 | SFC(総合政策学部・環境情報学部) | 文理横断型のカリキュラムで、政策・経済・情報・環境・デザイン・国際関係など幅広い分野を自由に組み合わせて学べる。実践的なプロジェクトやICT活用、グローバルな視点を重視。自分で学びを設計し、社会課題の解決に挑む学生が多い。 |
早稲田大学 | 国際教養学部 | 全授業の約7割が英語で行われ、多文化・国際社会の諸課題を文理融合的に学ぶ。リベラルアーツ教育を基盤とし、社会科学・人文科学・自然科学から自由に科目を選択。海外留学や国際交流が必修で、グローバル人材を育成。 |
早稲田大学 | 人間科学部 | 心理学・健康科学・教育・福祉・情報科学などを融合し、「人間」を多面的に探究。実験・調査・実習など実践的な学びも多く、文理の枠を超えたカリキュラム。社会の多様な課題解決に貢献できる人材を目指す。 |



この中でも東京大学は凄いよね。理Ⅰ〜理Ⅲ、文Ⅰ〜文Ⅲに分けて入試が行われるけど、入学するとまず全員が教養学部前期課程に入るんだよね。
その後、3年次から進学する学部を選ぶんだ。学びたいことがまだ見つかっていないから東大に行くという学生もいるんだよね。
学びたいことが決まっていないけど、大学には行きたい!という人は文理融合型の学部を目指してみるのもいいでしょう。
失敗する文理選択の共通点
失敗する生徒には共通したパターンがあります。それは「自分で決めていない」ことです。
文理選択は、その後の大学受験、大学生活、さらには就職まで大きく影響する重要な決断です。他人の意見や周囲の状況に流されて決めてしまうと、「こんなはずじゃなかった」と後悔することになります。
たとえ成績が思うように伸びなくても、自分で納得して選んだ道であれば、生徒は最後まで頑張り抜けます。
では、具体的にどのような決め方が失敗につながりやすいのでしょうか。教員として見てきた典型的な失敗パターンをご紹介します。



進路は最終的には本人が決断しなければなりません。私たち教員や保護者ができるのは、判断材料を提供することだけです。
周りの友達に流されて決める人
文理選択は自分の人生を決める大切な選択ですので、納得できる選択をさせたいです。
仲の良い友達と同じクラスになりたいから理系文系を選択する。さらには選択科目まで同じにするという生徒がいます。
高1で仲の良かった友達と、高2・高3でも同じ関係が続くとは限りません。学年が上がると環境が変わり、新しい友人関係ができたり、自然と距離ができてしまうケースもあります。
一時的な安心感や楽しさを優先して進路を決めてしまうと、自分の興味や将来に合わない選択をして、後悔する原因になります。
保護者ができるサポート
友達との関係を否定するとお子さんとの関係を悪くしてしまうため、慎重に声をかける必要があります。高校生にとっては、友達関係は何より大切です。目先の楽しさを制限して将来を優先するのは難しい選択になります。
まずはお子さんの気持ちを理解し、共感することから始めましょう。その上で、将来のことを親子で一緒に考える姿勢が重要です。
「友達と一緒だと心強いよね。でも、本当にやりたいことがそこにはあるのかな?」
「今は友達のことが大事だと思うけど、3年後の受験のことも少し考えてみない?」
「今の友達はもちろん大事にしよう。きっと大学へ行っても素敵な友達ができるよ。」
決して友達関係を否定するのではなく、より長期的な視点で考えるよう促すことが大切です。



友達との関係は大切ですが、自分の人生を左右する選択を、友達基準で決めるべきではありません。
お子さん自身の適性や興味に基づいて判断できるよう、サポートしてあげてください。
保護者に言われるがままに決める人
保護者の影響力が強く、本人の適性とは逆の選択をするケースがあります。このケースでうまく行った例を見たことがありません。
特に、本人は理系科目の自信がなく文系希望なのに、保護者が理系に行けと強要するケースが目立ちます。



Gさんは高1の12月、3者面談で文系に進級したいと申し出ました。しかし、後日出てきた書類は理系希望でした。
保護者は、以前から理系に行かせたいと言っていたので保護者の意向で変更したのでしょう。
Gさんは理系クラスに進級しましたが、数学・物理・化学などの理系科目で赤点を連発しました。クラス順位も最下位で学力は伸び悩みました。
結局、ギリギリで卒業して第一志望の国公立大学に受かるはずもなく、2浪して地方の私立大学に入学しました。



私はクラスの保護者集会で、様々な事柄に関して自分で決めさせてくださいと必ず伝えます。
保護者がレールを敷いて、その上を何の障害もなく歩んでいくことが正しいことでしょうか?
失敗もあるかもしれませんが、自分で悩み、考える過程こそが人を成長させます。
- 自分自身で課題を見つけて成長していく向上心が生まれない
- 保護者に何でも頼る(甘える)ようになる
- 自分の成績が上がらないことを保護者のせいにする
- 進路がうまくいかなかった場合、保護者を恨むようになる
高校生は、もう大人を目前に控えています。様々な事柄を自分で決断し、失敗を繰り返すことで成長します。失敗をすれば、自分自信で課題を解決するために工夫し、努力できるようになります。
進学や就職など保護者の皆さんが心配されるお気持ちは本当によく分かります。しかし、そこをグッとこらえて、お子さんを信じて見守ることが、最も大きな愛情ではないでしょうか。
適切な情報提供とサポートをしながら、最終的な決断はお子さんに委ねる。それが、お子さんの人生を豊かにする第一歩だと思います。
資格系学部に行く前に知っておくべきこと
資格が取得できる学部、たとえば看護学部や薬学部は「手に職がつく」「収入が安定している」といった理由から高校生や保護者に人気があります。
資格を取得すれば将来が安泰だと思われがちです。しかし、安易に「資格があれば安心」と考えて進路を決めるのは危険です。
- 転職のしやすさ
- 給与の上限
- 仕事の適性
入学前には見えにくい課題もあります。専門性が高い分、入学後に「自分には合わなかった」と感じた場合、進路変更が難しくなります。
資格系学部を選ぶ前に知っておきたいポイントを解説します。進路選択で後悔しないためにも、現実的な視点で検討しましょう。



資格系の学部を考えるときは、具体的な仕事の内容をちゃんと見極めてお子さんに理解させておくのがオススメです。
情報を集めすぎて損することはありません。
転職がしにくい資格がある
資格を活かした職業は、専門性が高い分、キャリアが長くなるほど他業種への転職が難しくなります。
看護師や薬剤師、保育士などは、資格がなければ就けない資格職ですが、その専門性ゆえに、一度その職種で働き始めると、異業種への転職やキャリアチェンジがしにくいです。
若いうちは未経験でも他業種にチャレンジしやすいですが、年齢を重ねると企業側は「即戦力」や「実務経験」を重視するため、資格職から全く別の業界に移るのはハードルが高くなります。
資格職は「入り口の強さ」と「出口の狭さ」を持つ
このため、「とりあえず安定しているから」「食いっぱぐれないから」という理由だけで資格系学部を選ぶと、後から「他の仕事もしてみたい」と思ったときに選択肢が狭まってしまうリスクがあることを理解しておきましょう。



教員も資格職の一つです。教員になるなら一度、会社員などの社会経験をしてから教員になることをオススメします!
給与の上限が大方決まってしまう
資格職の多くは、公的機関や制度に基づいて給与体系が決まっているため、一定以上の収入アップが見込めないことがあります。
看護師や保育士、教員などはどれだけ頑張って成果を上げても、評価や昇給に差がつきにくいです。勤続年数による昇給や、資格手当が上限となり、それ以上の飛躍的な年収アップは望めません。
「頑張った分だけ稼ぎたい」人には不向きな一面も
資格職は安定した職業である一方で、成果主義のビジネス職のような実績による報酬アップがしにくいです。
やりがいや人の役に立てる実感は大きいですが、「年収1000万円以上を目指したい」「成果に見合った報酬が欲しい」などの思いがあるなら、一般企業や起業の道も視野に入れる必要があります。



同じ仕事をずっと続けられる根気があるか、お子さんに考えてもらいましょう。
大切なのは「資格を取ること」ではなく「どう働きたいか」です。
退学を余儀なくされるケースも
資格系学部では、国家資格取得に向けた厳しいカリキュラムが課されます。
特に国家資格の場合、大学を卒業しないと国家試験の受験資格すら得られないため、「とりあえず在籍しておく」という姿勢では通用しません。
大学案内などでよく見かける「国家試験合格率95%」の数字は、入学者のうち95%が合格するという意味ではありません。
「卒業生のうちの95%が合格」という意味であり、国家試験に合格できそうにない学生を卒業させず、相当な勉強量と進級条件を課しています。
「思っていた勉強内容と違った」「実習が精神的にきつかった」などの理由で、資格系学部を中退する学生は一定数存在します。
中退して別の進路に切り替える場合でも、受験し直しや転学科が必要になり、時間や費用のロスが生じてしまうのが現実です。



偏差値が低くても入りやすい薬学部や歯学部などは卒業できないリスクがあるので、気をつけたほうが良いでしょう。
まとめ:人生を豊かにする文理選択サポート
文理選択は、お子さんの大学生活、就職、そして人生全体に大きな影響を与える重要な決断です。少ない情報で安易に決めるべきものではありません。
最も大切なのは「お子さん自身が納得して決断することです」
保護者主導であったり、友達に流されて決めたりしない方が良いでしょう。自分で決めれば責任は自分で追わなければなりません。人に決めてもらうと、他責思考になり、「自分が失敗したのは親のせいだ」と思考が変化します。
理系の方が就職が良いという理由だけで選ぶのも危険です。本人の適性があるかどうか慎重に見極めなければなりません。



研究への興味がないと中退になるケースもあるから注意しましょう。
文系もけして悪い選択ではありません。大学生活で何かに一生懸命取り組めば、それを就職活動のネタにすることもできます。



文系は時間に余裕があって、サークルやバイトなど充実したキャンパスライフを送れると思います。
また、資格系学部は途中の進路変更が難しいので、十分に注意しましょう。
成功している卒業生の共通点は「自分で決めた道を歩んでいる」ことです。21年間の指導経験で断言できます。
手をかけすぎたり、制限を与えたりする保護者のお子さんほど自立できず、大きく成長しない確率が高いです。
お子さんを信じて、見守る勇気を持ってください。
- 適切な情報提供はしても、決定権はお子さんに委ねる
- 「失敗」を恐れるのではなく「成長の機会」として捉える
- お子さんの決断を最後まで応援する
お子さんの成功を祈っています!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
エデュウェーブ 学びの探究
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